さて、おっさんの馴染みのカフェ、カフェ・ド・ラ・コメディさんです。
コメディ?お笑い芸人が集まる喫茶店か?などと思った方は…いないでしょうが、日本語で「コメディ」というとやっぱりお笑いのイメージじゃないでしょうかね。
フランス語で「コメディ」というと、お笑いの意味もありますけど、「演劇」の意味もありますね。この「カフェ・ド・ラ・コメディ」さんも、何故「コメディ」かというと、「コメディ・フランセーズ」のすぐ前にあるからで、「コメディ・フランセーズ」はフランス古典劇を上演する劇場です。嘗ては「モリエール座」といって、17世紀古典主義の作家、劇作家、俳優であったモリエールが劇団を率いて劇を上演していた所です。
観劇前の腹拵えの人達も芝居帰りの人達も「カフェ・ド・ラ・コメディ」でよく見かけます。
カフェの内装はこんな感じ。
奥の鏡張りの壁には芝居の登場人物が描かれてます。ここではやっぱりフランス古典劇風の人物が描かれてますが、この「コメディ」の元はイタリアの「コメディア・デラルテ」ですね。
古代ローマ時代に源流を持つといいますから、大変な歴史です。もともとは即興演劇で、類型化されたいくつかのキャラクターが演じる即興風刺劇とでも言ったらいいんでしょうか。
この「コメディア・デラルテ」の類型化されたキャラクター(所謂ストック・キャラクター)の一つが「アルレッキーノ」です。アルレッキーノのフランス語読みが「アルルカン」で、フランスの絵画なんかによく出て来ます。英語読みで「ハーレクイン」ですね。「ハーレクイン・ロマンス」のマークはピエロみたいな服を着た人物ですが、あれが「ハーレクイン」です。バットマンの宿敵ジョーカーの部下にハーレクインがいて、やっぱりピエロみたいな格好をしてますね。
アルレッキーノは軽業師、道化師で、ギャグのお約束でしょうか、大阪名物ハリセンチョップみたいに(?まさか。)他の登場人物を叩く為の棒(スティック)を持っていて、これが所謂「スラップ・スティック(ドタバタギャグ)」の起源だそうですが。
どこかユーモラスな役柄だけあって、ペテン師でもあるアルレッキーノではありますが、大悪人はでなくどこか間抜けな小悪党といった感じに描かれることが多い様です。
もうひとつの主要なキャラが「パンタローネ」で、パンタローネが穿いていた様な長ズボン(昔は半ズボンが一般的だった)が「パンタロン」、フランス語でもイタリア語でもパンタロンといえばズボンの事ですね。英語のズボン「パンツ」は「パンタロン」の短縮形でしょうかね。パンタローネは裕福な、でも強欲な商人で、おまけに女好きでしかも絶倫。パンタローネが一儲けしようとすると、周りのキャラがいろいろと横からちょっかいを出して台無しにするというのがコメディア・デラルテのお約束のストーリーですけど、これってやっぱり、狂言の「太郎冠者・二郎冠者」なんてのを思い起こさせますね。いつの世も、虐げられた弱い者が偉そうな奴に一泡吹かせてやっつけるストーリーというのは大衆演劇による憂さ晴らしな訳ですか。「フィガロの結婚」なんかもその類型に入れて良いでしょうかね。
これをやってくとキリが無くなる訳ですが。
で、このコメディ・フランセーズ前のカフェ・ド・ラ・コメディは、ルーブル美術館にも近く、ルーブル付近でちょっと一休みとかトイレをかねて休憩、なんていう時には良いですね。
この店のトイレは二階にあるんですが、階段が凄い。
狭い、急な階段で、更に天井が低いので、大柄な方、背の高い方は要注意です。
ある日カフェのカウンターでコーヒーを飲んでたら、ちょうどギャルソン(ボーイ)さんがクレーム・ブリュレを作ってましたので撮らせて貰いました。なんか調理器具というより「工具」ですよね、これ。
クレーム・ブリュレの作り方としては焼印みたいなのを熱して、それで砂糖の表面を焼くのもありますけどね。
ルーブル界隈で一休みしたい、という時に白い日除けのカフェが見えたら、この店かも知れませんよ。試してみますか?クレーム・ブリュレ。
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