2013年12月16日月曜日

怪盗キングアラジン…?

…「怪奇大作戦」?いくら何でも古過ぎるだろ。
いや、今日の話は「怪盗ガルーガルー」だし。

ところで前回、「ai」 だからと言って「愛」とは限らないし、「藍」も有り得るよなぁ、と思って締め括りの文章を書いた訳ですが、実は更に予想の斜め上を行く文字でしたな。聞けば御父上の命名だそうで。なかなか素敵な御父上じゃありませんか。

うちの子供達の名前もまぁ変わってる部類に入るんでしょうが。

それはさて置き。今日はモンマルトル繋がりでこんな物。


俳優でもあり、彫刻家でもあった(不思議な組み合わせですね)ジャン・マレ氏による「壁抜け男」の彫刻。うむ、ちゃんと壁を抜けてますなぁ。

壁抜け男の左手は、観光客がこの彫刻と握手しながら記念写真を撮るからテカテカになっております。サクレクールの祭壇の裏にあるサン・ピエール像の足みたいなもんか。いや、サン・ピエールは天国の門番で(だからサン・ピエール像は必ず鍵を持った姿で表されるのですね)、みんな「天国に入れて下さいね」と拝む為に足に触れるんですけどね。


「壁抜け男」の作者マルセル・エイメさんはモンマルトルのノルヴァン通りの先っぽにある小さな広場に面したアパートに住んでいて、現在そこはマルセル・エイメ広場という名前になっております。銅像もエイメさんの顔を模したものなんだとか。

この小説は日本語版も出てますし、劇団四季のミュージカルでも有名ですね。

http://www.amazon.co.jp/%E5%A3%81%E6%8A%9C%E3%81%91%E7%94%B7-%E7%95%B0%E8%89%B2%E4%BD%9C%E5%AE%B6%E7%9F%AD%E7%AF%87%E9%9B%86-%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%BB%E3%83%AB-%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%83%A1/dp/4152087862

http://www.shiki.gr.jp/applause/kabenuke/index.html

劇団四季の舞台では人生賛歌の側面が強調されてる様ですが、バッドエンドと捕らえる方も多いです(唯一の救いはヒロインのイザベルが言う「私も壁の中へ!」という台詞ですね)。まぁ、読もうと思えばこのラストシーンは安部公房の「砂の女」みたいな読み方もできるかな?壁を自由に通り抜ける男と砂の壁に閉じ込められる男は対照的ですけどね。

安部公房は「鳥の様に飛び立ちたいと願う自由もあれば、巣籠って、誰からも邪魔されまいと願う自由もある。」と語ってますが…

抵抗文学としての読み方もあるそうですし、奥が深いですねぇ。と思ってたらもう一つ。


「モンマルトルに、デュティユルという名の、何の苦も無く壁を通り抜けるという特異な力を持った普通じゃない男がいた。」役所の最下層の平凡な務め人であるこの男が偶然にこの不思議な力を手にして、まずは職場で、彼を馬鹿にし、侮辱の言葉を投げつけた上司に一泡吹かせる為にこの力を使う。
そして数々の盗難事件で怪盗ガルーガルーとして名を上げた後は、今度はサンテ刑務所で、彼の脱獄をどうする事もできない所長の番だ。この囚人は脱獄して近所で昼食をとり、無邪気に所長を店に呼びつけて支払いをさせる…
しかし、この民衆の英雄を、「愛」が躓かせた。(恋人との)情熱の一夜の後、彼は壁を抜けようとして、壁の中に閉じ込められてしまう。以降、「冬の夜、ノルヴァン通りのしんとした静けさの中、」ただ画家のジャン・ポールが奏でるギターの音だけが「月の雫の様に石の中へ染み透って行く」…
マルセル・エイメの情容赦無い明晰さは、1943年に発行されたこの短編集の中で、管理され尽くした日常や現代社会の退屈の中に、魔法の杖の小さな一振りで幻想の皮肉な氾濫を突き付ける事に捧げられた。

判った様な判らない様な。つまりこのペール・スタークの解説を書いた方は、この小説を管理社会に対する反乱と見ているという事ですかね?

いろんな書評とか見ても、「これで決まり」という解釈は見当たらない。その辺、ベケットやイヨネスコと通じる所もあるんでしょうかね。エイメが1902年生まれ、ベケットが1906年、イヨネスコが1909年生まれです。

そう言えば若い頃渋谷ジァン・ジァンにイヨネスコの「授業」を見に行ったなぁ。パリのテアトル・ド・ラ・ユシェットでは今でも「授業」「禿の女歌手」を上演してるそうな。今度見に行ってみようかな。

ん?モンマルトルは?「壁抜け男」の話は?どこ行った?

2013年12月3日火曜日

Some say Love…

さて愛とは一体何なのでしょうね。

I say Love, it is a flower, and you, its only seed…

Just remember in the winter far beneath the bitter snows,
lies the seed that with sun's love in the spring, becomes the rose…

ベット・ミドラーの「the Rose」 名曲ですなぁ。しかし実際にジャニス・ジョプリンみたいな女がいたら、周りの人達はえらい目にあうでしょうな。

おそらく求め続けて行く物が恋、奪うのが恋
与え続けて行く物が愛、変わらぬ愛
だからありったけの思いをあなたに投げ続けられたらそれだけで良い

さだまさし「恋愛症候群」この人も詩人ですね。大抵のミュージシャンは「作詞」というけれど、この人の場合は「作詩」なのも頷ける。

まぁ、難しい話をするつもりはありません。単なるマクラです。

本題はこちら。


Mur des je t'aime とググれば絶対出て来ます。おっさんがモンマルトルを歩く時には大抵寄るポイントですが。

612枚のタイルに覆われた40㎡の壁一面に250の言語による311個の「愛してる」が書かれていて、これはフレデリック・バロンとクレール・キトーという二人のアーティストの作です、とパリ市観光局のHPには書いてあるのですが、


実際にはダニエル・ブローニュという人のサインも入っているぞ?誰だ?


そしてこの壁はオリビエ・ペラとダニエル・ブローニュによる個人メセナであると。あ、この寄贈主のブローニュさんが作者の方にも入ってるという事か。製作にも関わったんだろうか。

暇な時、この壁の前でこれは何語、これは何語と調べるのが結構楽しみだったりします。

これは間違い無く分かりますな。ジュテーム。フランス語です。


これも分かるけど、一部間違いもありますな。キトーさんの方が東洋の言語の表記を担当したらしいですが、やっぱり完璧ではないらしい。

 

英語。


イタリア語。


スペイン語。


カタロニア語。


ドイツ語。


あれ、我爱你もあったのに画像が無い。

この位は分かるけど、さっぱり分からない物もあって、これはどこで使われてる言語(文字)だ?


そしてあちこちに鏤められた赤い欠片は、現代社会において様々な形で引き裂かれてしまった「愛」を表現しており、その、ばらばらになってしまった愛をこの壁が一つにまとめるというコンセプトだそうで。


ここに来た記念に自分達の名前を書いちゃう人もいたりして。(多分。)


手話と点字でも書いてあるんですが、この点字、点字アルファベット表と照らし合わせてみても、どうも一致しないんですが?


なんか手話の下にも誰かが書き込んじゃったっぽいのがありますね。しかし「パパ愛してる」って、他に書く相手はおらんのか?

これは国際手話ですね。小指を立ててアルファベットの「I」、親指と人差し指を立てると「L」、親指と小指を立てると「Y」、「I Love You」の頭文字を全部一遍に表してるんですね。国際手話は聴覚障害者の国際的な集まりの為に特別に作られた手話ですが、実際にはアメリカ手話の方がよっぽど通じる様です。人工言語である所も、英語の方が広く使われている所も、エスペラント語みたいなもんですか。

日本手話でもアメリカ手話でも「私」「あなた」はそれぞれ自分と相手を指差しますが、「愛」「愛する」という単語は日本では左手の拳の甲を右手で撫で回す(子供にイイコイイコするみたいに)、アメリカでは両手を握り、胸の前で腕をクロスさせて抱き締める仕種をしますね。映画「Siter Act(邦題『天使にラブソングを』)」で、フィナーレの「I will Follow Him」の中で二人のシスター・マリアのデュエットからシスター・マリア・ロバートのソロに移る時、「There isn't an ocean too deep, a mountain so high it can keep, keep us away, away from his love.」の「Love」の歌詞の所でシスターがする仕種です。

フランスはちょっと違っていて、手のひら(やっぱり「掌」の方が雰囲気が出るんだが…)を胸に当て、その胸にある思いを相手に差し出す様な仕種で「愛してる」を表しますね。

てか、手話を言葉で表すのって難しいので、こんなのを御覧頂ければ一目瞭然かと。



ま、この「ジュテームの壁」の事は書こうと思いつつ、伸び伸びになってたんですがね。今日丁度同僚の方と食事してて「Sister Act」の話も出て来たし、そう言えばこの人の名前にも「愛」の字があったなぁ…などと思ったんで。

いや、アルファベット表記でしか見た事無いので確かな事は言えませんが…
違ってたらゴメンナサイ。