2011年5月31日火曜日

素直にテニスの話を書く訳が無い。

始まりましたねぇ、ローラン・ギャロス。全仏オープンと言うよりもローラン・ギャロスと言った方が通じるんじゃないでしょうか。先日ギャラリー・ラファイエット・デパートに行ったら、やっぱり置いてましたよ、ローラン・ギャロス・グッズ。

フランスに来たばかりの頃、日本から「今度パリに行くお客さんの為に、ローラン・ギャロスのチケットを取れないか」という指示が来まして。テニスに関しては全く何も知らないおっさんは、アシスタントのフランス人の女の子に「ローラン・ギャロスって何?」と聞きました。「ええっ!?知らないの!?」「知らない」「テニスよ、テニス!」「テニス?ふぅん、で、ローラン・ギャロスってのは何なの?テニスのプレイヤーなの?」「え?うーんと…多分ね」「多分って何だ、人の事をローラン・ギャロスを知らないのかってあんなに驚いたくせに、自分も知らないのか?」
非常に不毛な会話をしました。その後、ローラン・ギャロスとはテニスのスタジアムの名前であり、そのスタジアムで行われる大会である事をやっと理解したのですよ。

おっさんはローラン・ギャロスがテニスの何かであると判った時点で、ローラン・ギャロスというのはテニスの有名な選手で、その選手が出る試合のチケットが欲しかったのかと勘違いしたので、上記の質問をした訳ですが、帰って来た答えは「多分」。アシスタント嬢も知らなかったらしいですね。後日調べたら第一次世界大戦のエースパイロット、飛行家の名前でした。

地名や施設の名前に人名を付けると言うのは日本では余りやりませんね。こちらでは当たり前。パリの空の表玄関は「シャルル・ド・ゴール空港」ですし、国立近代美術館は「ジョルジュ・ポンピドー国立美術文化センター」の中にあります。国立図書館は「フランソワ・ミッテラン図書館」ですし、フランスの海外領、インド洋にあるレユニオン島には「ローラン・ギャロス空港」があります。そう、このローラン・ギャロスさんはレユニオン島出身なのですね。
5月1日にも書きましたけど、ローラン・ギャロスは1913年に地中海横断飛行をしとります。

その四年前、1909年にはルイ・ブレリオがドーバー海峡横断飛行に成功してますね。約40Kmの海峡を32分で飛んだそうですが。パリにありますよ、ミラボー橋の16区(西)側に「ルイ・ブレリオ河岸」。

ローラン・ギャロスの地中海横断飛行から一年、第一次世界大戦です。
世界初の空中戦というのは、当時まだ風防ガラスなどは無く、オープンカーならぬオープンプレーンだった訳ですが、拳銃で撃ち合って(当たる訳が無い)、お互い弾丸も尽きて、拳銃を投げつけ合って分かれたそうですが。
その後、操縦席に機関銃を取り付けた飛行機が発明されました。ところが、機関銃を発射した途端、自分のプロペラを撃って墜落したそうです。で、当時は複葉機だったので、二枚羽の上側の翼の上に機関銃を取り付け、引き金に紐をつけてトイレの水を流すみたいにして(例えが古いな)空中戦をやったとか。

これを覆したのがギャロスでした。彼は操縦席に機関銃を取り付け、更に弾がプロペラに当たったら弾き飛ばす為の金属製のガードをプロペラの銃口にあたる部分に取り付けたのでした。複葉機の上の翼に機関銃が無いから、武装してるとは敵は気付きません。更に操縦席から直接撃てるから命中精度も上がります。
その後ギャロスが撃墜されると、このアイデアはドイツにばれてしまいます。更に、プロペラが通過した直後に弾丸が通る様に機関銃とプロペラをシンクロさせる技術も開発され、更に兵器としての飛行機は発展するんですけどね…

ヨーロッパの飛行機の歴史上、もう一人の重要人物はサントス・デュモンですね。彼は1906年、動力飛行機によるヨーロッパでの初飛行に成功してます。
アルベルト・サントス・デュモンはパリで飛行船を研究し、1901年には飛行船「エアシップ6号」を開発、エッフェル塔を一周するコンテストで優勝して大スターになりました。

「空を散歩する」事にこだわり、飛行船に乗る時でも無粋な作業着など着ずにお洒落をして、シャンペンを欠かさなかった男。(飲酒運転、いや飲酒操縦じゃないか?)

ライト兄弟に続き動力飛行機ヨーロッパ初飛行を達成した男。ライト兄弟の初飛行から僅か3年、1906年にはもう自分の飛行機「サントス・デュモン14-bis」を完成させています。

カルチエが「サントス・ウオッチ」を捧げた男。当時は懐中時計の時代。女性用か、軍隊用の実用一辺倒の腕時計はありましたが、紳士用腕時計というのはまだありませんでした。操縦しながら、両手が塞がった状態でも使える、しかもお洒落な、紳士用腕時計の誕生です。

「飛行機を戦争の道具にしないでくれ」と国際連盟に前代未聞の嘆願をした男。
そして彼は飛行機の兵器化に心を痛め自らの命を絶ちます。

「空飛ぶ男 サントス・デュモン」 ナンシー・ウインターズ著 御一読を。
彼の記念碑はパリ郊外ブローニュに今もひっそりと立ってます。

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