2011年6月22日水曜日

ノッポビルの麓。

パリにはパリ駅・中央駅というのはありません。
ローマならテルミニ駅、ベルリンならベルリン中央駅、ジュネーブならコルナヴァン駅という中央駅があります。
パリは六つの長距離線の駅があり、行き先によって使い分けなきゃいけないんですね。

本日はパリの六つの駅の中で唯一近代建築のモンパルナス駅。


元々のモンパルナス駅は1840年に建てられてます。その後1852年、現在のモンパルナスタワーやギャラリーラファイエットデパートのモンパルナス店がある辺り、モンパルナス大通沿いに新しい駅舎が造られました。
この頃、フランス西部への列車を走らせていた鉄道会社が再編されて西鉄道会社が発足します。で、この西鉄道(Chemin de fer de l'ouest)がモン・サン・ミッシェルまで汽車を走らせていたのですね。


このモン・サン・ミッシェルへと続く防波堤道路(今はもう線路は無く、道路です)はもうすぐ無くなってしまいます。モン・サン・ミッシェル湾の保護のために取り壊されてしまうんですね。
この西鉄道の「左岸駅」がモンパルナスで西フランスの南部担当、「右岸駅」がサン・ラザールで、西フランスの北部担当でした。
更に、現在のモンパルナス駅とほぼ同じ位置にメーヌ駅が増設されます。

1960年代、パリ・モンパルナス地区の再開発計画で、モンパルナス駅は南に移動し、メーヌ駅と合併します。旧モンパルナス駅前、モンパルナス大通り側にあった地下鉄モンパルナス駅と、旧駅裏にあった地下鉄ビヤンブニュ駅が繋がって地下鉄モンパルナス・ビヤンブニュ駅になりました。ビヤンブニュはメトロの父といわれた技師、フュルジョンス・ビヤンブニュの名からとった駅名ですね。

旧駅舎跡地にはショッピングモールとモンパルナスタワーが建てられました。この高層ビル「モンパルナスタワー」は物議を醸しました。パリの街にこんな高層ビルは似合わないと言う議論が巻き起こり、再開発計画そのものをもう一度見直す破目になったのですね。


今ではこのモンパルナスタワーの屋上展望台は人気の観光スポットです。地上200メートルから、360度の眺望がありますからね。

さて、この今はもう無い「旧モンパルナス駅」はフランス人にとっては忘れられない駅だったんじゃないでしょうかね。1944年、ドイツの支配からパリを解放したルクレール将軍は旧モンパルナス駅に司令部を置いて市街戦を指揮しました。
今でもモンパルナス界隈には軍人さんの名前のついた通りとかが多いですね。ルクレール将軍通りを始め、ドロンヌ大尉通り(パリに一番乗りした戦車隊長)、第2機甲師団通り(ルクレール将軍が指揮した部隊)とか、ムショット司令官通り(第二次世界大戦のエースパイロット)とか。

そして1895年の鉄道事故。これもいまだに絵葉書やポスターになって売られてますから、パリに行った事がある方はお土産物屋さんなんかで見た事があるんじゃないでしょうか。


現在のモンパルナス駅付近は、クレープ屋さんが多い事で有名ですね。クレープの名産地、ブルターニュ地方からノルマンディー地方にかけての列車の玄関口ですもんね。勿論レストランみたいな店を構えたクレープ屋さんもありますが、こんな屋台も人気です。


そしてモンパルナスに限らず、屋台のクレープ屋さんといえば、もうワンセットの様にしてあるのがメリーゴーラウンド。


パリ中いたる所にこのクレープ・メリーゴーラウンドのセットがあるんですけど、ここのメリーゴーラウンドを見てて、さすがフランス、とか思っちゃいました。

お馴染みの馬とか馬車とかに混じって、ジュール・ヴェルヌの「海底二万里」に出て来る潜水艦「ノーチラス号」


同じくジュール・ヴェルヌの「地球から月へ」に出て来る宇宙船「コロンビアード号」


サン・テグジュペリの「星の王子様」(フランス語「Le Petit Prince」)のロゴの飛行機


ディズニーランドのアトラクションにもフランス風の味付けをして、スペースマウンテンをジュール・ヴェルヌの「地球から月へ」の世界に合わせてアレンジしちゃう国ですもんね。今はスペースマウンテンは改装されて「ミッションⅡ」となり、本来のスペースマウンテンに近い形になってますが、「地球から月へ」のロケット打ち上げをイメージした、スタート直後の急上昇は変わってませんね。

新しい物も取り入れつつ、自己のアイデンティティーも忘れない。フランス人の良い所でもありますが、それが時に「頑固」「頑迷」になって顔を出す事も結構多いですけど。

0 件のコメント:

コメントを投稿