2011年6月13日月曜日

あの、ちょこんとついてるのは何ですか?

さて本日は十字架のお話。

相変わらずモン・サン・ミッシェルは人気ですねぇ。何かの雑誌だかテレビだかのアンケートによると、日本人が行きたい世界遺産の第二位だそうです。じゃあ一位は?マチュピチュだそうです。でもまぁマチュピチュは本当に地球の反対側、増して高山病の心配をする様な所ですからね。モン・サン・ミッシェルも遠いけど、パリから日帰りツアーなんかもありますしね。

で、モン・サン・ミッシェル帰りの人達から時々質問があるのが、「あの、十字架の上にちょこんと付いてるのは何ですか?」という事ですね。そしてこんな写真を見せられる訳です。いや、これは先日行った時に自分で撮って来たんですが。
これはいずれもモン・サン・ミッシェルの見学コースにある物ですが。十字架の上にちょこんと。これはイエス様の罪状書きですね。…と言ったら「ザイジョウガキって何ですか?」と来た。今でも何か事件があって犯人が逮捕されると「どこ出身(または在住)の誰を何の罪で逮捕した」とニュースや新聞に出るでしょう?あれと同じですよ。この人は誰で、何の罪で処刑されるのかが書いてあるんです…はぁ。

まぁ、確かにこの十字架だけの上に罪状書きが付け加えてあるのは珍しいかも知れませんね。十字架にイエス像が付いている場合には、この罪状書きはイエス様の頭上に付いてる事が多いです。こちらもやはりモン・サン・ミッシェルにある別の十字架像。
イエス様の頭上に、巻紙みたいなものがあって、「INRI」の文字。これがイエス様の罪状です。ラテン語で「Iesus Nazarenus Rex Iudaeorum」(ユダヤの王、ナザレのイエス)ですが、この頭文字をとった訳ですね。ギリシャ語バージョンだと「INBI」になるんだそうです。ラテン語、ギリシャ語、ヘブライ語の三つで同じ事が書いてある事もあるそうですが。

十字架にかけられる死刑囚は、刑場まで、この罪状書きを首にかけ、十字架を持って(引きずって?)歩かされたのですが、刑場に着いて十字架が地面に立てられる時、この罪状書きの板は死刑囚の頭上、十字架に取り付けられたそうです。

キリスト教の黎明時代、ローマ帝国では、ローマの神々や、神格化された皇帝を拝みさえすれば、国教以外の土着の宗教に対しても結構寛大だったんだそうです。ところがユダヤ教だけは例外で、唯一神ヤハウェしか認めないユダヤ教徒は皇帝を崇めたりしませんでしたが、特例として許されていました。やっぱり商業、経済活動の中心はユダヤ人達だったんでしょうか。ユダヤ人なしではやって行けなかったんでしょうかね。
キリスト教も一神教で、皇帝崇拝はしませんでした。キリスト教がユダヤ教の中の一派くらいに考えられていたうちは良かったのですが、はっきりと別の宗教だと解って来ると、皇帝を崇拝しない、社会秩序を乱す不穏分子という事になるのですね。ユダヤ教徒たちにとってもキリスト教徒はユダヤの伝統を乱す奴等、という事だったんでしょうが、ローマ帝国にとっても、神格化された皇帝やローマの神々を敬わないというのは反逆罪、不敬罪に当たった訳でしょうかね。

そういう事で、「ユダヤの王(リーダーとでもいう意味でしょうか)を名乗ったナザレの人イエス」「Iesus Nazarenus Rex Iudaeorum」は処刑されます。イエス様はベツレヘム(現在のパレスチナ自治区の中)生まれとされていますが、ナザレ(北イスラエル)で育ち、活動を開始する訳ですからほぼナザレ出身、「ナザレのイエス」なんですね。

ところで、似た様な組み合わせ文字で、「JHS」というのもあります。これは単純明快、「JESUS」を意味します。ギリシャ語でHはEの発音に近いんだそうで(ギリシャ語はよくわからん。さっぱり解らん事を英語で「It's greek to me」(こりゃギリシャ語だ)と言いますが、フランス語では「C'est du Chinois」(中国語だ)と言います。関係無いけど。)、「JHS」で「イエス」となるんだそうです。JとIの境界線もはっきりしませんからね。Juliaと書いてユリアと読んだりしますし。(北斗の拳のユリアさんはどうだったんでしょう?)
とはいえ、これは多分後から付け加えた解釈だと思いますけど、「JHS」には「Jesus Hominum Salvator」(イエス、人々の救世主)とか「In Hoc Signo[vinces]」(この印によって[勝利せん])の意味もあるそうですね。

1534年8月15日、イエズス会が発足し、その創立メンバーの一人、フランシスコ・ザビエルが1549年に日本にキリスト教を伝える訳ですが、このイエズス会の紋章は「IHS」の組み合わせ文字に十字架をあしらった図柄になってますね。イエズス会では「IHS」の組み合わせ文字は「Jesum Habemus Socium」(私達には同行者イエスが居る)と読んでいたそうですが。

この手の話をした後、「さて、では『HT』は何でしょう?」「えー?HT?何だろう」「阪神タイガースですねん!」なんてやってた観光ガイドさんがいたそうです。「『YG』は何でしょう?」「読売ジャイアンツですよ!」のバージョンもあったそうですが。

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