あゝ皐月 仏蘭西の野は火の色す… じゃなかった。これはもっと先だ。
菜の花のシーズンがやって参りました。別に遠くまで行かなくても、パリ近郊、例えばシャルル・ド・ゴール空港からパリに入る高速道路の脇にも一杯咲いてます。
菜の花や 月は東に 日は西に 蕪村
この句は蕪村が神戸六甲山脈の摩耶山で詠んだものだそうですね。摩耶山は菜の花の名所だったとか。海にも近く、青い海に沈む赤い夕陽、反対側から昇る白い月。一面黄色い絨毯の様な菜の花畑。更に春風の柔らかな緑色も加えましょうか。そして土の匂い、花の香り、山の空気の匂い。お日様の匂い。潮の香り。で、ここに蕪村は一人でいるのでしょうか?それとも誰かと?もし連れの人がいるとして、その人と蕪村は一体どんな気持ちでこの風景を眺めるのでしょうか?或いは一人だったら?…このたった十七文字で、どれだけのイメージが頭に浮かぶんでしょうか。豊かな句ですねぇ。
老後、子供達が巣立ってヒマができたら、古女房と二人、こんな風景の所を巡って、まったりしたいもんだ…などと考えてるのはこっちだけ、女房の方はそんなの全然興味無い、なんてのはよくある話ですなぁ。
で、以前モンサンミッシェルに行った時に、菜の花、夕陽、潮の香り、ん~、これってまさしく…等と思い、こんな写真をとる気になったんですねぇ。
「菜の花や…」
もう一つ。こちらはモンサンミッシェルからちょっと離れた Moulin de Midrey からの眺め。
「月は東に…」
ここで躓いた。高性能カメラが欲しいと切実に思った瞬間でありました。そして、鋭い人はお気づきになったかも。月の形が句の内容と合ってない。(これをはじめると国語じゃなくて、理科の話になっちゃうんで、今回はパス。)すみません、これ、同じ時に撮影した物じゃありません。
「日は西に」
海じゃなくてクエノン川に沈む夕陽?まぁ、クエノン川の先に海があるから。このクエノン川はノルマンディー地方とブルターニュ地方の境界線でもあるのですね。
月の写真がダメだったので、代わりにこんな物を買って来ました。モンサンミッシェルの近くに工房を構える職人さんの手作りの七宝焼きのペンダント。まさに「月は東に日は西に」です。
モンサンミッシェルは陸地から見れば北側にありますので、左側(西)に夕陽、右側(東)に月。
で、お土産物屋さんを物色してたらこんなのを見付けてしまい、やっぱり衝動買い。悪い癖だ。
ところで、これ、何でできてると思います?ひょっとしたら空港の金属探知機に引っ掛かるかも知れません。このペンダントとブレスレットは、釘でできているんですねぇ。それもただの釘じゃなく、蹄鉄を馬の蹄に打ち付ける為の釘です。
モンサンミッシェルがあるノルマンディー地方は、競走馬の産地でもあるのですね。そして蹄鉄は幸運のシンボルでもあります。モンサンミッシェルの中にある民家の入り口に飾られた「幸運のシンボル」蹄鉄。
チャップリンの短編映画「ボクサー」にもありましたねぇ、飛び入りボクシングで、仲間の参加者から「幸運の蹄鉄」を貰って、グローブの中に蹄鉄を入れて、まさに「鋼鉄のパンチ」で相手をノックアウトするギャグ。もう一つ、幸運のオマジナイの兎の足の話も笑いましたけど。
チャップリンの芸って基本がパントマイムですから、台詞が無くても十分楽しめますね。トーキーに移ってからの作品ですが「独裁者」の、風船の地球儀のシーンなんか、解説なんか要りませんよね、ホント。チャップリンもそうですけど、「天井桟敷の人々」のバティストとか…
こらこら、また脱線して来たんじゃないか?と言う声も聞こえて来そうですが。
十七文字の「言葉」でこれだけの世界を表現する俳句と、仕種、表情、視線の動き等で様々な「言葉」を伝えうるパントマイム。対極にあり、且つ同種の喚起力を持つ、何とも不思議な関係にある二つの芸術ですねぇ。
喚起力と言えばやっぱり音楽も見逃せない訳ですが。って、まとめようとしてるのか、また脱線しようとしてるのか、どっちだ、まったく。
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