日本には無いけれど、フランスにはあるもの。町のゴミ箱。日本に帰った時なんか、本当に不便に思います。日本の街中にはホントにゴミ箱がないですねぇ。みんなごみは持ち帰ってるんですよね。パリの街中には、到る所にゴミ箱があります。まだ日本みたいに分別は進んでませんので、ゴミの種類など御構い無しです。最近やっと分別用の黄色いビニール袋のゴミ箱が出て来ましたが。
日本にはあるけれど、フランスには無い物。公共の時計と公衆トイレ。
パリの街を歩いていて、あ、そういえば時計を忘れた、とか、いつも携帯で時間を見てたのに携帯の充電が切れた、なんていう場合。時間を確かめるのが一苦労ですね。日本なら街灯の支柱みたいなのに取り付けた時計とか、時計台っぽいもの、お店を覗けば大抵時計があるし、こんな不自由は無いんですがね。パリの街で公共の時計があるといえば大きなターミナル駅の大時計とか、(オルセー美術館も元は駅だった建物を改装しているので大時計があります)薬局のネオンとか。パリの街には派手なネオンサインが少ないせいか、緑の十字の薬局のネオンが非常に目立ちます。中には、ネオンサインの中に日付、現在時刻、気温が交互に表示される物があります。その位でしょうか。
公衆トイレ。これもまた苦労します。パリの街でトイレに行きたくなったら、やっぱりカフェでコーヒーを一杯。カウンターで立ち飲みなら1ユーロから1.30ユーロ位ですかね。そう言うと、日本の方の中には「えー、トイレに行くのにわざわざコーヒー飲むの?」なんて聞いて来る方も居ますけど、日本でだってトイレに行きたいから喫茶店に入ったとか、トイレを使う為にコンビニで何か買ったとかあるでしょうにねぇ。
カフェに入って、注文もそこそこにトイレに駆け込むと、便器はあるけど便座が無い、なんて事もよくあります。どうやって使うんでしょうかね。中腰?空気イス状態?フランス人は日本人より脚力が優れているんでしょうか。相撲関係の方から、外国人力士は膝が弱いと聞いた事がありますが。
カフェのトイレでもう一つよくあるのがトルコ式。使い方は和式と一緒です。しゃがんでする訳ですが。和式は便器を跨いで使いますが、トルコ式はこの、何と言うか足を乗せる台?足場?というか飛び石みたいな奴に足を乗せてしゃがみます。
気を付けなければいけないのは流す時ですね。水を流す紐を引っ張ると(こういう事自体日本では見なくなりましたよね)、結構な勢いで水が出て、便器に跳ね返って、そこに立っている人を直撃する事がよくあります。うっかりしゃがんだまま流したりしようものなら…あんまり想像したくありませんけど。皆様、もし海外旅行中にトルコ式トイレに出くわしたら注意しましょう。とあるカフェのトイレには、「跳ね返った水がかかることがあるのでご注意ください」という貼紙があったのですが、「かかることがある」を「必ずかかる」に書き換えた落書きがしてありました。
近代的なトイレもちゃんとありますよ。近代的過ぎて(?)笑ったのはとある空港のトイレ。パリ市内の某ホテルにも同じのがありましたが、このトイレの個室内にはセンサーがついていて、自動で水が流れます。用を足して立ち上がると自動的にジャーッという訳ですが、これが曲者。センサーの設定が悪いのか、もともと設計に問題があるのか、個室に入る為にドアを開けると(内側に開きます)ジャーッ。体を個室内に滑り込ませるとジャーッ。ドアを閉めるとジャーッ。座るとジャーッ。使用の最中でも、少しでも体を動かして角度が変わるとその度にジャーッ、ジャーッ。そしてやっと本来のタイミング、立ち上がるとジャーッ。ドアを開ける時、個室から出る時、ドアを閉める時、一度の使用で一体何回流れたんでしょうか。文明の利器を使って水資源の無駄遣い。行き当たりばったりは得意ですからね、フランス人。
さて、パリの街には公衆トイレが無い訳じゃありませんけど、決して多くは無いのですね。以前は有料だったのが、最近やっと無料化されてきたこんなトイレ。
これも大抵「便座が無い」タイプですが、もう一つの特徴。このトイレは使ったあと、流すスイッチがありません。どうするかというと、そのまま外に出て、ドアが閉まると水が流れ、更にあちこちから水が噴出してトイレ内全部を洗浄します。衛生的ではあるんでしょうが…何人もの人が並んでいても、一人が用を足し、出てきてドアを閉め、洗浄し、OKサインが出たら次の人が入り…と、かなり時間がかかります。それを知らずに、前の人が出て来たのと入れ替わりにトイレに飛び込んでしまい、ずぶ濡れになって出て来た人もいたとか、いないとか。
さて、そんな近代的(?)なトイレがパリの街にも増えつつありますが、パリ最古の公衆トイレというのをご存知ですか?こんなの。
後ろの石の壁はサンテ刑務所ですね。パリ南部、アラゴ大通りにあるパリ最古のトイレ。見てわかる通り、男性の、しかも「小」専用です。1834年からあちこちに設置されたこのトイレは、最初、設置を決定したセーヌ県知事クロード・フィリベール・ド・ランビュトーの名をとって「ランビュトー柱」と呼ばれたそうです。マルセル・プルーストも、超大作(本当に偏執狂的な大作ですが)「失われた時を求めて」の第七編「見出された時」の中で、この公衆トイレの事を、「ランビュトーは幼少の頃から水のせせらぎを聞いて育ったんだろう」なんて書いてるそうですが。写真は現在唯一残っている当時のトイレ。今もタクシーの運転手さんなんかがササッと用を足しては走り去って行きます。
ランビュトー知事としては自分の名前が公衆トイレを意味する言葉として残るのが嫌だったんでしょうか、この名は使われなくなりました。ヨーロッパでは一般に、公衆トイレの事をVespasiennes,ウェスパシアヌスのトイレと呼びます。西暦74年、ローマ帝国のウェスパシアヌス皇帝は内乱の後、復興の為の資金稼ぎにローマ市内に公衆トイレを設置しました。ただしこれは使用者から料金を取るのではなく、集めたオシッコを売って利益を出したのでした。肥料にでもしたのかな?いえ、当時は羊毛の脂分を洗い落とすのに人の尿を使ったので、羊毛業者さんに売っていたのですね。
かくしてウェスパシアヌス帝は、トイレの代名詞として自分の名を歴史に残したのでした。
そういえば、吉田茂さんでしたかね、イギリスで、どこかの大使館だかのパーティー会場に向かう途中、猛烈な尿意に襲われ、会場に着くと同時に案内係に「トイレはどこだぁ~!」と叫んだそうです。ところが、このパーティーのルールとして、到着したゲストは案内係に名前を告げ、案内係は「○○様ご到着ぅー!」と大声で告げる事になっていたのですね。そして、この案内係は忠実に(というか一部のイギリス人にありがちな慇懃無礼さとでも申しましょうか)職務を遂行し、「便所様ご到着ぅー!」とやったとか。
「便所さん」になってしまった吉田さんは、後に「あんなに恥ずかしい思いをした事はない」と語ったそうですが(当たり前だ)、公衆トイレに名を残したウェスパシアヌス帝の方は、政敵から「便所で儲けるなんて」とイヤミを言われても、「その金の臭いを嗅いでみろ、臭うか?」と涼しい顔だったとか。
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